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議会選政策調査(1) 4年前の不祥事報道から、地方議会のイメージ、住民からの見られ方はどう変わったか?

ローカルマニフェスト推進地議連と早大マニ研は7月、「統一選 政策ビラ解禁に向けた 議会イメージ・政策型選挙調査」を実施しました。

2018年8月29日

2018年に公職選挙法が改正され、2019年春の統一地方選挙から議会議員選挙での政策ビラの配布が一部解禁されます。

当所顧問で元三重県知事の北川正恭・早大名誉教授は、選挙を「情実から契約へ」「お願いから約束へ」と変えることを目指して2003年にマニフェストの導入を提唱。国政選挙や知事選挙では政策ビラの配布が早くから解禁されましたが、都道府県議会・政令市議会・市議会ではようやくの解禁となりました。

「マニフェスト」という言葉をめぐっては様々な賛否両論がありますが、選挙で「政策を選んで投票する」ことについて、有権者はどのように感じているのでしょうか。

候補者は政策で選ばれ、有権者は政策で選ぶ「政策型選挙」の推進や実現を目指し、

「現状の地方議会がどのように有権者に見られ、何を期待されているか」

「4年前からイメージはどう変わったのか」

を有権者目線で調べるために、2018年7月に以下の観点で調査しました。

  1. 今の地方議会はどのように見られているのか?
  2. 2014年から地方議会の見られ方はどう変わったか?
  3. 選挙の際、何を判断材料にして投票しているか?

※本調査の調査概要については、文末で紹介しています。

■地方議会の役割は変わり、形式要件は整ってきた

日本は2000年の地方分権一括法の施行から制度上、「中央集権国家」から「地方分権」の国へと変わりました

国・都道府県・地方自治体の間も「上下(上意下達)」の関係から、一緒によりよい地域をつくる「対等協力」の関係へと変わり、二元代表の一翼を担う地方議会も執行部の監視・チェックだけでなく、立法機関としての「決定(議決)」、「提案(政策提案条例など)」、「民意の反映」の役割が求められてきています。

「議会改革」に取り組み状況の1つのバロメーターとして、議会のあるべき姿や理念を掲げる「議会基本条例」の制定状況を例に見ると、早稲田大学マニフェスト研究所「議会改革度調査2017」では調査自治体の半数を超えたとの結果も出ています。

法学などで使われる考え方に、”形式要件”と”実質要件”というものがあります。

地方議会がよりよい地域を創るための手続きが有るか無いか、つまり成果を出すための制度や仕組み、活動が活発になってきたという意味で「”形式要件”は整ってきた」ということがみてとれます。

ただ、そうした活動の結果、「地域が変わった」など具体の成果は本当にあらわれているのでしょうか。

実体が変わったかについては、なかなか見えない、捉えづらいということもあり、”実質要件”が整っているかについてはまだまだ調査が必要です。

■2014年から地方議会・議員の見られ方はどう変わったのか?~2つの調査の比較~

「地方議会」をめぐって、2014年には1つの契機がありました。

兵庫県議会議員による政務活動費の不正受給と”号泣会見”、そして東京都議会の「セクハラ野次問題」が起き、「公費の使いみち、チェック体制のずさんさ」「女性へのセクハラが公然と行われる議会の風土」「自浄作用の乏しさ」など、「地方議会」に対して主に報道を通じて大きな批判がむけられました。

超党派のローカルマニフェスト推進地方議員連盟では、そうした状況に危機感を持ち、「地方議会は有権者にどう見られているのか」を調査しました。

そのときもっともインパクトがあった数字が、「地方議会や議員は何をしているかわからない 56.1%」という結果でした。

続いて、「いてもいなくても同じだ 34.9%」「支援団体の利益を考えている 24.7%」といった負のイメージももたれていることがわかります。

その他、「地域の面倒をこまめにみている身近な存在」という声にはの「そうではない」の割合が多く、地方議員や議会は「身近な存在ではない」という意見が多かったということがいえます。

また、その他の項目についても「そうではない」といった否定的なイメージが多いことがよくわかります。

そして、見過ごされがちな大きな問題は、そもそも「わからない」や「どちらでもない」という声が多いことです。

議会がどんな存在意義があるのか、どんな機能を発揮すべきなのか。

そうした議論もとても大事なことですが、地方議員や議会に対して、大半が「何をしているかわからない」という印象を持っているなかで、「良い」とも「改善が必要だ」とも感じられていないこの現状こそが、まず地方議会や議員が向き合わなければいけない、住民のホンネなのだと思います。

それでは、4年間が経った今回の調査では、どんなイメージの変化があったでしょうか。

赤色の「そう思う」に該当する回答で最も目立ったのは、「地方議員(個人)は何をしているかわからない 52.3%」「地方議会(組織)は何をしているかわからない 49.1%」という数字でした。2014年の調査から微減していますが、住民の半数が活動の内容を知らないという状況には変わりがありません

前回調査で3番目に「そう思う」が多かった「支援団体の利益を考えている」は34.7%(10ポイント増)と2番目に多くなり、イメージの悪化が見られます。

また、「身近な存在かどうか」については「身近ではない」との回答が36.6%と、前回同様に高い水準のまま変わりがありませんでした。

一方で、「地方議員(個人)はいてもいなくても同じだ 22.5%」「地方議会(組織)はあってもなくても同じだ 21.5%」というように約10ポイント減少し、かつ「そうは思わない」との声が増加しました。地方議会の存在意義については、理解が進んだといえます。

また、全体的に、グレーの「わからない」が大幅に減少しています。

上記に触れたもの以外の項目でも「そう思う」との回答がおおむね増えているのも事実です(注:前回から選択肢が変わっているため、単純比較ができないものもあります)。

2014年から今年に至るまで、地方議会に関する報道を目にすることが増えたのは間違いありません。その結果として「わからない」と他人事にせずに意見を持つ人が増えたことは、前向きな傾向として捉えてもいいと思います。

※なお、前回調査からの変更点として、「何をしているかわからない」「いてもなくても同じだ」の設問については、「地方議会」と「地方議員」を分けて調査しています。また、その他項目については前回と今回で一定程度、設問を入れ替えて聞いています。

■2014年から2018年の間に変化はあったか?

では、上記のようなイメージの変化以外にも、この4年間で地方議会について変わった部分はあったでしょうか

次回の記事では、議会や議員の活動の伝わり方、議会活動や機能の向上、議会活動の成果や信頼について、住民はどのように感じているかを調査結果を紐解きながら解説します。

早稲田大学マニフェスト研究所

事務局:青木、永尾

mani@maniken.jp

※「議会選政策ビラ解禁に伴う議会イメージ・政策型選挙調査」調査概要

調査は、事前調査で「投票に行く」と回答した方を対象に、1,173名から回答を全国から回収しました。男女や性別は均等に割り付けて、ほぼ同数の回答数を集めています。